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実験公演がしたい、と思っています。
というのも、主宰の山本は京都芸術センターより、「SF」というテーマで脚本を書くよう、依頼されているのですが、どういったものを書いたものかと思案しているのでした。
SFは「現在から未来を描くもの」と仮に考えたとき、「過去から現在に続いている物語」が参照できるのではないかと考えました。
というわけで、「日本むかし話」がやりたいのです。
なぜ、むかし話は、過去から現代まで伝わっているのだろうか。なにが1000年の物語たらしめているのか。
それは、たとえば「桃太郎」であり「鶴の恩返し」であり「天女の羽衣」であり「雪女」の話だ。
それらに共通しているのは「女性の登場人物の行動動機が、なんだかよくわからない」。そして「わからないのに、現在にも伝わっている」こと。
だから、「桃太郎」のおばあさん(当時の平均死亡年齢から考えておばあさんは30代だ)は、なんで桃と称して赤子を拾ってきたのか。なんで子供が鬼退治しに行くといったとき、団子を待たせるのか。そもそも物語を通じて、桃という伏線が全く生かされてない――。
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「鶴の恩返し」は、なぜ嫁のいるカロクの家にわざわざやってきて、機を織るのか。自宅で織って来ればよかったんじゃないか。ないしは、完成した織物だけ差し入れすればよかったんじゃないか。
「天女の羽衣」の天女は、何で結婚して数年は男と暮らしたのか。自由になるチャンスはいつでもいくらでもあったはずだ。なんで子供までもうけた。男と暮らした数年間はなんだったんだ。
「雪女」。全部意味不明だ。なぜ老父を殺し若者を生かした。なぜ若者に嫁いだ。なぜ若者と秘密の約束をした。なぜその約束を自分で破らせようとする。なぜ若者と結婚した。最初から結婚なんかしなければいいじゃないか。なぜ、秘密をばらしたから去っていかねばならないんだ。お前は、幸せになりたかったんじゃないのか。
なぜ、こんな不条理が、1000年後の現在に伝わっているんだ。
それを考える、もう一つの補助線として、「現在」起きている事象として「アイドル」という現象を見つめてみたい。
アイドルは「過去がなく」「現在」から「歴史を作ろうとする」ものと、考えてみたのでした。
過去と現在、そして現在から未来へ。1000年の物語。
「1000年の物語を語る」とは何かを、劇作、稽古、公演を通じて考えたい。そのための、実験公演。
と、そう考えています。[/su_column]
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オーディション日時
5月21日(日) 13時・18時
5月22日(月) 13時・18時
(全日程定員となりました)
全四回・各回定員12人程度まで
(どれも同一の内容となりますので、一回のみの参加で結構です)
場所
都内稽古場(返信時に詳しい場所をお送りします)
参加資格
18歳以上で、8月公演に出演を希望される方
(ワークショップ参加のみという方でもOKです。メールフォームの備考欄にその旨をお書きください。定員になりそうな場合、出演希望の方を優先いたします)
参加費
500円
お申し込みについて
※全日程、定員となりました。多数のご応募誠にありがとうございます。
『太郎以前(仮)』 あらすじ
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1
赤子は、妻の言葉を借りるならば「どんぶらこ」と流れてきたという。妻は歳を取った。俺も歳をとった。俺たちは、おじいさんとおばあさんの二人暮らしだ。子どもはいなかった。
「桃だと思ったんよ」
と妻は言う。でも、手に抱えているそれはどう見ても赤ん坊だ。
2
カロクは、自分の事を「おつう」だと名乗る女を見たが、どう考えてもそれは、この間罠にかかっているところを助けた鶴だった。カロクは妖怪変化の類を信じる方ではなかったが、そうはいっても、明らかに足を怪我しているし、顔も鳥っぽいし、全体的に白いし、「あ、そん、そう、お、恩返し? あ、べ、ちがう、えーと……」みたいなことを言っているし。
「仕事してるところ見ないで欲しい」と、嫁と暮らしている俺のところに来て無茶を言う。
そもそも、俺は嫁と暮らしているんだ。嫁は、おばあさんといったってまだ30代だし、女だし、そこに若い女泊めてくれ、ハタおらせてくれって、こんな深夜になんだ。
恩返しの品としてもらった反物は、明らかに自分の体毛だし、「お前さ、自分の体毛で恩返しとか、それはちょっと重いよ」と言うのだけれど聞かない。だから、作業場に踏み入ったら「なんで見るの?」みたいにヒステリックに言われて、いや、そりゃあ見るだろって。痛いーとか時折聞こえてきたし、基本泣いてるし。なんでそんな、恩返しをおれに見せつける? もっといい方法、あったろ。恩返しの方法。実家であらかじめ作ってきて、反物だけくれる、とか。そもそもなんで自分の体毛で布をつくるよ。そういうんじゃなくて、もっとこう、あったろう。……あったろう。方法が。
3
たしかに結婚するとき俺はお前から羽衣を取って、「返してほしければ結婚しろ」みたいなことも言った。そうでもしないと、きこりなんてやってる俺は天女と結婚できないと思ったからだ。俺は暴力的な男だったし、それは反省しているし、悪いところがあれば言ってくれたら直そうと思っているし、自分なりに直しても来た。それで、10年やってきた。10年だ。10年結婚しておいて、それで今更? 今更実家に帰るっていうのは、なんなんだ? 結婚がそんなに嫌だったのか? 俺は当時に比べれば、もう酒も飲まない、暴力も振るわない、ちゃんとした。お前と暮らすうちに、ちゃんとした。ちゃんとしたじゃないか。だったらなんであの時すぐに帰らなかったんだ。羽衣なんて、すぐ見つかっただろう。この10年の結婚生活は、なんだったんだ。なんで今だ。お前は基本的に天女だから、結局、天女みたいなちゃんとした女、俺と釣り合わなかった、そういうことか? お前は、10年、何を思っていたんだ。
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4
雪女はそういうと去っていったけれど、何度考えても男にはこの一連が全く分からなかった。父は雪山で、雪女に殺された。殺す時「お前は生かしてやる。私と会ったことは秘密にしろ。秘密を守れないなら殺す」と言われ、それで山から下山してしばらくして、明らかに雪女のお前が女房として押しかけてきて、俺は、もう意味が分からなかったよ。別人を装ってるし。何度も俺に口を割らそうと「あの雪山でどなたかとお会いになったのではありませんか?」と誘導尋問してきて。お前だよ。お前に会ったんだよ。美しすぎるお前に会ったんだよ。お前に、惚れたんだよ。だから、結婚したんだよ。好きなんだよ。愛してるんだよ。殺されかけたのに。だから、お前だったんだろ。雪女はお前だったんだろ。秘密にしたじゃんか。お前以外に誰にもこの話してないじゃんか。なんでだ。なんでお前はそうなんだ。なんで去っていくんだ。
「それは私、私、私でした。……それは雪でした。」
雪なのかよ。私なのかよ。おまえは私なのかよ。殺すんじゃなかったのかよ。なんで生かす。なんで俺は、お前に出会った。
◇
男たちは全く分からなかった。男たちはなぜ、女たちがこういう風になるのか、まるでわからなかった。男たちは手を振る。女たちはそれに、応える。男たちは、女がなんでこんな風になっているのか、まるでわからない。だから、聞きたかった。女たちの歌を、おどりを、仕草を、語りを。
男たちは女がしゃべりだす、その瞬間を、ただただじっと見つめている。[/su_column]
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