2+2がわからない学生が通っている
2025年、ドナルド・トランプ前大統領はある大胆な措置を発表した。アメリカの大学における留学生の受け入れ資格を一時停止したのである。この時の彼の発言が、少々意味深だったのを覚えているだろうか。
「2+2がわからない学生が通っている」
えっ? ハーバード大学にそんな学生いる?
と、思わずツッコミたくなる。世界有数の頭脳が集まる名門大学に、「2+2」がわからない学生なんているはずがない。しかし、この一言は単なる皮肉以上のものを含んでいた。この“2+2”には、実は歴史的な意味が込められている。
「2+2=5」――旧ソ連のスローガン
話は約100年前、旧ソビエト連邦にさかのぼる。
スターリン政権下、国家経済の急速な近代化を目指して導入された五カ年計画。
これは「5年でこれだけの成長を遂げるぞ!」という壮大な国家目標であった。
ところが、あるとき当局はこの計画を4年でやり遂げるぞ!と大号令をかける。
この時のプロパガンダ・スローガンが、なんと:
「2+2=5」
前半2年+後半2年で、5年分の成果を出すぞ!という意味である。
もちろん数学的には間違っている。だが、イデオロギーの世界では理屈よりノリと熱意が勝つ。
トランプの一言に込められた赤い皮肉
ここで冒頭のトランプ発言に戻ろう。
彼が「2+2がわからない学生が通っている」と言ったのは、共産主義の非合理性や幻想を揶揄した発言だったと見るのが自然だろう。
具体的には、共産主義国家――特に中国からの留学生を指していた可能性が高い。
つまり、「アメリカが中国の共産主義者に教えることなどない」
――という政治的メッセージが、あの一言に込められていたのだ。
ラッパーのような痛烈なDIS。
トランプ節が冴えわたる瞬間である。
おまけ:共産圏のポスター、かっこよすぎ問題
「2+2=5」という狂気的なまでのポジティブさ。
それをビジュアル化した共産圏のプロパガンダポスターも、これまた異様にグラフィックセンスが高い。
重厚なタイポグラフィ。
誇張された労働者の肉体美。
情熱的な赤と黒のコントラスト。
その不気味なかっこよさに、つい心を奪われてしまう人も少なくない。