繁栄の影に潜む疲弊
2025年現在、表面的には先進諸国の多くが経済成長を維持している。
アメリカはAIと株高で好調を演出し、中国は5%超の成長率を発表、日本も一部産業で復調の兆しを見せている。しかし、それらの指標が映すのは、あくまで表層であり、実体経済の深層では各国がそれぞれ異なるかたちの経済的疲弊を進行させている。
比較指標8項目
- 実質賃金成長率
- 家計債務比率(対GDP)
- 住宅価格/所得比
- 医療破産率・制度の脆弱性
- サブプライムローン等の延滞率
- 食料支援・生活保護受給者数
- 消費者信頼感指数
- 若年失業率
アメリカ:制度疲労型の繁栄
アメリカは名目上の経済成長を維持しているが、その裏では制度疲労による社会的な擦り切れが進んでいる。医療費による破産が個人にのしかかり、クレジットカードや自動車ローンの延滞率も上昇している。家計債務比率はGDP比で75%超と高止まりし、住宅価格も歴史的高水準にある。
若年層の失業率は比較的低いが、実質賃金の伸び悩みとインフレの継続で、中間層は疲弊の色を深めている。
中国:制度未完成型の拡張
中国は一見堅調な成長を続けているように見えるが、実体は制度未完成型のリスクが拡大中。
特に都市部の若年失業率は16.5%と非常に高く、教育を受けた層の職不足が社会不安を招いている。また医療制度は脆弱で、2023年以降800以上の病院が経営破綻。家計債務比率も急上昇しており、制度インフラが整わないまま都市化と中間層拡大を推進してきたツケが表面化している。
ドイツ:構造的停滞型の先進国
ドイツは公的医療制度の安定性や労働者保護の手厚さでは欧州随一だが、エネルギー価格の高騰や製造業の競争力低下が経済の成長性を圧迫している。実質賃金は上昇傾向にあるが、パンデミック以前の水準にはまだ戻っていない。消費者信頼感指数は-24.7と、4カ国の中でも最も深刻な景気悲観が表れており、庶民の経済的期待値は著しく低い。
日本:静かな衰弱型社会
日本は総じて経済不安が慢性化している。完全失業率は2.4%と低いものの、若年層は約10%と高め。2024年には医療機関の休廃業・倒産が過去最多を更新し、制度の持続可能性に疑問符がつきはじめている。特に顕著なのは、物価上昇と賃金のギャップである。
実質賃金の動向
2024年末から2025年初頭にかけて、基本給の上昇が見られ、32年ぶりの伸び率を記録した企業もあった。しかし、物価の上昇がそれを上回るため、実質賃金は3カ月連続でマイナスとなっている(2025年1月)。
一方で、2025年春闘では平均5.3%の賃上げが見込まれ、中小企業でも引き上げ圧力が高まっている。 さらに、後半にかけてCPI上昇率が2~3%台へ鈍化するとの予測があるため、実質賃金がプラスに転じる可能性が出てきている。とはいえ、その改善は兆しに過ぎず、持続可能性や幅広い層への波及には課題が残る。
四カ国、四様の内臓疾患
| 国家 | 疲弊の型 | 主な症状 |
| アメリカ | 制度疲労型 | 医療破産、債務過多、インフレと実質賃金ギャップ |
| 中国 | 制度未完成型 | 若年失業、医療制度崩壊、家計債務の急増 |
| 日本 | 静かな衰弱型 | 実質賃金低迷、医療体制のひずみ、景気悲観 |
| ドイツ | 構造的停滞型 | 消費者信頼感低迷、成長鈍化、製造業の空洞化 |
どの国も、それぞれの制度的特徴や歴史的経緯の中で、別の形で疲れている。
重要なのは表面的なGDPや株価ではなく「どれだけの人が安心して働き暮らせているか」という視点で見ることだ。政策当局が数字に踊らされず足元の暮らしを見据えたビジョンを持てるかが、今後の回復力を左右する。