第11回公演
夜組
2017年1月13日~23日
池袋シアターKASSAI
山本健介
中野あき(ECHOES) 由かほる(青年団)
高橋ルネ(ECHOES) 善積元
舞台美術:泉真 舞台監督:吉成生子 照明:みなみあかり(ACoRD) 音響:田中亮大 衣裳:正金彩 宣伝美術:サノアヤコ 総務:吉田麻美 WEB:岡崎龍夫 写真:刑部準也 演出助手:萩野あやこ 制作補:柏木健太郎 制作:土肥天 協力:ECHOES 主催:The end of company ジエン社 助成:芸術文化振興基金助成事業
俺は思った。
あいつも、俺も、
「夜組」なんじゃないか、と。
夜に起きるようになってしまってから、数か月経つ。
起きるのはたいてい、相撲中継が終わったあとだ。夏の間はそれでも日が差している時間もあったが、この季節になると寒さとともに、街は喪に服したような昏さになる。
川の近くの街だ。
電力は制限される前から、この街の夜はもともと昏い。この昏さの中、『死んでるさん』と呼ばれる死者が徘徊していると聞いたが、俺はいまだに出くわしたことのない。
川の近くに、キリン型の鉄塔がある。
そのキリン型の鉄塔の近くに、携帯型ラジオを持っていく。夜、その鉄塔の付近でのみ、声を拾えるラジオがあるのだ。俺はその声を聴きに行く。
「家族! ……本当の家族には言えないあなたの日常を送ってください。採用された方には、ひょんめんみゃんもんすう、もうぺんはるもにあ、あごす、よごるよごろてりあ、まくろまふすう……」
深夜のラジオだ。時々、人間ではない違う生き物の言葉も入ってくるのは、この鉄塔が気持ち悪いせいだと思う。
「本当の家族には言えないあなたの日常」を送るという、そういう趣旨のコーナーにもかかわらず、投稿リスナーたちは次から次へと、ありえないシュールな日常を送ってくる。投稿のあまりの狂いっぷりに、パーソナリティの二人は笑い続ける。狂った言葉と、笑い声が、死体の匂いのする川の、小さい範囲に響いている。なぜこのラジオは、ここで聞けるのか。そもそも電力が制限されている中、深夜に聞けるラジオなんて、どうして存在できるのだろう。こんなに人が死んでいるさなか、どうして俺はまたここに、ラジオを聞きに来たんだろう。
向こう側で、誰かがこっちを見ている。昏くてよくはわからない。見ることはできない。ただ、存在するときに立てるわずかな音と、気配で、
何かがいるようなことだけはわかるのだ。
俺は思った。あいつも、俺も、「夜組」なんじゃないか、と。
1月14日(土)19:00 アフタートーク
出演者と作・演出家による深夜ラジオをめぐるトーク
善積 元、寺内淳志、山本健介
トークの記録映像
https://youtu.be/nO28pHPrpPc
★1月17日(火)19:30 アフタートーク
ゲスト:佐々木 敦 氏(批評家)
トークの記録映像
https://youtu.be/WiqrxSIQ0Ic