春宵の中で死にたい 2023/3/112023/9/19 深夜4時の都会を歩いた。 コートも要らなかった。 冬とは違う匂い。 啓蟄の草花の気配。 ほろよい。 靴音の反響。 生きていたい気分の時こそ、少しだけ死にたい。 空気や経験やひとが発した言葉による力学で、自分の中に混在する複雑な関数の数々が、シンプルな方程式に統合されることがあって。 そういう夜だった気がする。 深夜の都会を歩いて、願わくば、こんな春宵の中で死にたいと思った。