九識の窓(3)

本を読み、作品に触れ、他人と出会い、経験を積む。
その度、いかに人間が不定なものなのかを思い知らされる。同時に、いかに世の中が不定なものかも。

最近になって、数学を学ぶ意味がわかり始めた。
中学数学までは抽象的で合理的な学問だと思う。変数の話題から、不確定性の世界に足を突っ込む。虚数を扱い始めるといよいよ不確定な世界の話だ。ほとんどの中高生が口を揃えていうことは「実用性がないじゃないか」
この意見に先生も答えられない。

こんな風に考えられると思う。
ある地点からある地点まで12kmを時速6kmで歩く。
普通に考えたら2時間で到着する。これが「いわゆる」数学の一般的なイメージ。
実際にはその道に、立ち止まりたくなるような風景があったり(v)、歩く人のコンディションが悪かったり(c)…様々な要素に影響されてその値は増減する。

h = 12 / 6 + v + c + …
h = 2 + …

そういう風に人間はできているし、心は揺れを持っている。
揺れの全てを計算式で導き出すことはできるのか、森毅の本など読むと、本当に数学ができる人はその領域の計算をしていることを感じる。その揺れを方程式に置き換えられるのなら、それは哲学だと思う。

数学のみならず、文学だろうが、デザインだろうが、突き詰めればそういった、合理性と揺れの狭間にある人間の姿を扱うことになり、それを識るために勉強や経験はあるのだと思う。
合理的でありながら、そういう揺れを勘定に入れる力を賢さというのだと思う。

合理的であることは尊い。
ただ、合理性のみで物事を判断するのは思慮にかけると言わざるを得ない。googleMAPが正しい時間を叩きだすようになって、風景に立ち止まる時間は失われた。googleAnalysticがユーザーの動向を示すようになって、情報の価値は数字のみになってきた。息苦しい世界の黎明期が、始まっているのかもしれない。
どう生きるべきか。
分からないのならなおさらに、本を読み、作品に触れ、他人と出会い、経験を積む。ひたすらに、本を読み、作品に触れ、他人と出会い、経験を積む。

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