
保育園でこどもがないている
歩き回った人が空を見やる
夕日は電線にからまって
とまった鳥をからすにしていた
そうざい屋の行列で語られるのは
ねびきの話と町のうわさ
駅前の壁によりかかる学生は
恋人がくるのをまっている
女の子がカメラをかまえた空に
あげもののにおいがおどっている
ちんどん屋が演奏をやめたとき
街灯がまたたいて目をさます
踏切の遮断器があがるときに
一番星みつけた
そろそろだれもかれもが
おばけになる時間
東京でカレーができるころ
シドニーは食器を洗うころ
上海もごはんが炊けている
リオデジャネイロはすやすやねむっている
電車のホームから
あの日々を思えば、遠く
そろそろだれもかれもが
おばけになってしまう時間
東京でカレーができるころ
バンコクは買いものをしているころ
ダカールはまだ朝ごはん
ニューヨークはお酒で酔いどれる
ちんどん屋も女の子ももういない
あげもののにおいも夜にきえ
恋人たちは歩いていった
商店街のシャッターは口を閉ざす
鳥たちは闇の向こう側へ
空をみていたひとはおつかれさま
保育園のこどもが泣きつかれたとき
ほら、お母さんが、迎えにきたよ