口が日になって田になるように
品が晶になって畾になるように
頭に皺が増えて、日々はひび割れる
おじいさんは
山へ芝刈りに行く振りをして
FX投資に夢中
おばあさんは
川へ洗濯に行く振りをして
ネカフェでアニメみてる
桃を拾う者は誰もいない
水を吸い続けた皮が傷みはじめた
本当なら練馬区あたりで
平穏な冬に凍えながら
肉まんでも食ってる筈が
甘い匂いや、不思議な煌めきや
面白い音楽に惑わされているうちに
銀河鉄道に乗っていたり
異国のトイレでぶっ倒れたり
巨大な桃の中に全裸で監禁されたり
する
愉快か不快かは人によって違う
巨大な桃の中には闇がある
川のせせらぎも聞こえる
外は夜だろうか
あなたはなにを
しているのだろうか
おじいさんは芝を持たずに帰宅
おばあさんの洗濯物は済んでいない
それでも夕食がレトルトではないということが
大事なことだと思う
食卓にあるたわいもない会話の一つ一つが色彩であると思う
結局
巨大な桃はダムに落ちて大怪我
医療保険入っててよかったっすわ
本当なら立川あたりで
平穏な冬の中で
甘栗でも食ってる筈が
引越しの算段でもしている筈が
ダムで大怪我
月見ながら眠るその前に
田代まさしや
山田邦子や
あなたは
いまごろなにを
しているのだろうか
と思う
口が日になって田になるように
品が晶になって畾になるように
頭に皺が増えて、日々はひび割れる
畾って何だ