夜の向こう側の茫漠

 帰宅途中、明日の予定を考えてみた。やるべきことはいっぱいだ。帰国後もやることは多い。まあひとつひとつやってくしかない。そんなことを考えていると、ふと、辺りが静まり返っていることに気がつく。ひと気はない。来たばかりの六月の頃は、ここの川沿いには夜でも人が多くいて、芝生に腰掛けてビールを飲んでいたはずだ。あーそっか、冬なんだな、と思った。

 ドイツに行くのを決めたのは今年の一月だったから、一年前の今頃、十一月の終わりの頃は自転車でハロワに通い、就職活動にいそしむ退屈な日々だった。毎晩酒を混ぜては悪酔いしていた。部屋の風通しの悪さに具合を悪くした。煙草をやめたりいろいろな試行錯誤をしてみたのだけど、何をやってみても行き先が見えなかった。ぶっちゃけ涙が出た日もあった。
 深夜に聖跡桜ヶ丘の駅前の車道を歩いていたら、今後、なにをやっていこうにも人生を楽しめないような気がした。何をネガティブになってんだ俺はと、ネガティブな考えはいくら振り払おうとしても、つきまとってくる。もしかしたら、悪霊にとりつかれていたのかもしれない。
 静かな夜だった。夜の風呂敷には何ヘクタールかの面積があるとして、その向こう側には朝の風呂敷が広がっていて、その向こう側に、昼、夕、そしてまた夜と、たくさんの風呂敷がこの向こう側に連なっている。その風呂敷のどれもが汚れてる。永遠ともいえるような茫漠な時間がただただ虚しく感じられた。ここではない何処かに行きたい。何処かに行きたいと祈る気持ちだった。しばらく外にいたら寒くて少し凍えて、あーそっか冬なんだな、と思った。

 今日の帰り道は同じくらい静かで、足音がよく響いた。ここに居たい。ここにもっと居たいのにな、って思えた。
 目の前には一年前と同じく茫漠な時間が広がっていたが、それは本当にカラフルなものに思えた。俺の今後の前途多難はきっと素敵な冒険譚だと思った。さて、こっから先はまた冒険だ、立ち向かう勇気はあるか?と右眼の眼窩で誰かが問う。「いけるっしょ」「いけるいける」「問題ねえよ」「余裕だべ」「胸熱」細胞のそこいらが言ってる。ネラーが一人居る。やるべきことはいっぱいだ。なんていうか、にやにやしてしまう。

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 先週末、帰国最後に誘宵やりましたです。本当にいろいろな発見があったし、インスピレーションを得た。
なにより盛況だったのがうれしい。ありがとう。ベルリンで俺と縁のあったみんな、まじでありがとう。

またあそぼう。






photo by Non matsumoto


photo by Kamil Frankowicz

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