昏睡・希望

青年団若手自主公演『昏睡』

演出、岡崎藝術座神里さんと青年団、山内さん兵藤さんのによる作品。
岡崎藝術座の制作というごく近い立場からなるべく客観的に感想を書いてみる。

今月の頭に稽古場で通しをみせてもらったときは戯曲の力強さがとにかく色濃かった。
厄介な作品だなあと思った。戯曲作品として演出を撥ね退けるような立ちかたをしているような、テキストだけ読めば本当に舞台に上げるために書いたのかすら疑わしいような、文芸作品だった。そして、見た後になんていうかもやもやした抽象的な観念が影を落として、
見応えはあるけど解釈に困るというのが正直な感想だった。

今日本番を見て、戯曲の力と可能性を引き出すことにおいて、神里さんはやはり秀でてると改めて思った。公演チラシにあるように彼は戯曲から「希望」というテーマを読み取ったらしい。確かに今日見た作品の舞台上にあったものは「希望」のほかにないと思う。
三者は稽古場で見たときよりもクリアな確かな解釈を見せてくれた。
 
既成作品の演出は前提としてその作品への敬意がないと絶対にできない。それがないと絶対に失敗するといっていい。役者・演出家の三者は作品を子供のように丁重に扱い、愛で、そうすることで、「希望」という切り口で作品の本質を本気で引きずりだしてるような、その闘っている姿が浮かぶようなそんな作品だった。
引きずり出された本質は、僕にとって、男と女の、なんていうか存在の美しさ?というか
あーこの世には男と女がいるなあ!みたいな感嘆だった。

この作品において不要なものはほとんどない。こう演出されるべきが必然であったように思う。そしてその「必然性」こそが作品の価値の主たるもののように最近僕は思っている。


身内のこういう感想は客観性に欠けるし、まして僕は岡崎の制作でいやらしい感じも生じるだろう。でも、たまには文面でがっつり感想を述べるのも悪くないように思うし、自分では誇張なく書いたつもりでいる。

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さて、神里さんの次回作『ヘアカットさん』は既成戯曲ではない。オリジナルの新作だ。
つくりかたも作風も大きく変わるだろうし、kr14や『昏睡』でなにかを得た分敵も強大になるだろう。「期待している」なんて達観できる立場じゃないのはわかってはいるが僕にできるのはあくまでハードウェアの部分だけでソフトウェアの部分は一任するしかない。
きっといつものように奮闘してくれるだろうと思う。

とりあえずは『昏睡』千秋楽まで無事に突っ走ってほしい。
と、ごく近い距離から思っている。

青年団若手自主企画 『昏睡』
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2009/08/17(月) ~ 2009/08/26(水) 於 アトリエ春風舎
出演 山内健司(青年団), 兵藤公美(青年団)
脚本 永山智行(こふく劇場)
演出 神里雄大(岡崎藝術座)
http://okazaki.nobody.jp/
公式情報

Company会社概要

デザイン
会社名
合同会社elegirl
代表
岡崎龍夫
所在地
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前4-26-28 原宿V2ビル 2F
資本金
1,000円

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