産経新聞社からニッポン放送、独立して学習塾企業と、若かりし頃を上手く渡ってきた父にとって、この一人息子の根無し葛な今日は目に余るだろうと思う。
父は母と25で結婚した。
俺はあと半年もなくその年齢を迎えるが、当分結婚はなさそうだ。大学を辞め、その理由となった事務所さえ辞めた本末転倒荒唐無稽な俺の生き方がかなり心配や迷惑をかけているのも知っているから心苦しい。
父は俺をよく知らない。俺も父のことはよく知らない。小さい頃から長年で堆積した距離はお互いの口を塞ぎ、会話で埋めることのできない溝になった。そして父の激しい気性が家族を含めた周りの人間を遠ざけることもよく知っている。
母と離婚し、義母と再婚してから、仕事の傍ら俳作と園芸に勤しみ仏門に入った。もう60になる。夏に肺炎で倒れ、回復はしたが、そんなに長い訳じゃないこともわかる。仕事の量を減らし、週の半分はきままに過ごしてるとのことだ。
最近ブログをはじめたはいいが、記事の訂正を俺に頼んでくる。煩わしい。メールの使い方を憶えたらしく実家の猫の写真を頻繁に送ってくる。そんなにいらん。煩わしい。
それでも、あの狭い本にちらかった部屋の中で独り、猫の写真をひたすら撮っている初老の父の姿を想像すると、悲しくなる。
せめて死ぬまでに句集を作ってやろうと思う。
だから新しいPCが欲しいし、indesignの使い方をおぼえたいのです。
美談なんかじゃない。茶番。