おとこのこになりたい。
Sが泣いていた。
恋人でもないのに手をつないで帰る。なぜ彼女がそう言ってきたのかは全然わからない。てのひらには不思議な治癒能力があるのはあるらしいが。
そもそもSがなんで泣き出したのかすら知らないのだ。
結局、彼女は家の前まで何も答えなかった。
誰かの力になりたいなんて、おこがましいにもほどがあるんじゃないか。
この腕はそのためには細すぎるんじゃないか。
そして、おとこのこならただ黙れ。黙って言うとおりにしていればいいんだ。
それができないのは、だめだろ。
Sは理由もいわず泣きまくった。
別れてから、電車を待つホームで理由はわからないけれどなみだがでた。
理由はわからないけれどなみだがでまくった。
だめだ、だめだ。
おとこのこになりたい。