従業員募集の張り紙を探しに近所を歩き回っている。
ふうう。
この町豊川は豊川稲荷で有名だそうだ。
この豊川稲荷はなんと、日本三大稲荷のひとつであるらしい。
そして、いなり寿司発祥の地である。
どうだ!すごいだろ!まいったと言え!
クロスアウッ!(脱衣)
それは私のおいなりさんだ!
そんな変態仮面ごっこなんてやってたら直ちに捕まって町中に顔が割れ後ろ指を指されてしまうに違いない。
で、豊川稲荷の近くにある喫茶店Sに入る。
うーん。小汚い喫茶店だなあ。がらがらだし。店員いねえし。帰るか。
そうおもって振り返ると店員が入り口から入ってきた。
いらっしゃいませー。
うわ!びっくりしたあ。
逃げるに逃げれなくなり席につく。
座席はちょうど観光バスのシートみたいな感じだった。
コーヒーを注文する。
注文の待ち時間にそこら辺に置いてあるチラシを読むが、すぐに読み終わってしまった。チラシを投げ出してタバコを吸おうとしたその時、店員が慌しく近づいてきた。
「よかったらお読みになってください。」
東海ウォーカーと新聞を渡される。
おお。俺の手持ち無沙汰を察して持ってきてくれたのかあ。あんた優しいなあ。
喫茶店店員の鏡だよ。東京にはそんな奴いなかったよ。あんた。関取っぽいけど。
コーヒーが出てきた。
そんな心優しいおっさんのいれてくれたコーヒーは美味しいに違いない。
と、思いたかったが、どうもカップが安い。ちゃちい。さらに悲しいことにソーサーの上にミルクとスプーンのほかに何かのってる。
こ、これは!
柿ピーだ!柿ピーの袋だ!
これを食えと?おいおい、ビール注文したんじゃねえんだから。
コーヒーと併せて食うもんじゃねえ気がするけど。まあ、この店なりのサービスなんだろう。置いといてコーヒーを飲もう。
正直、味には期待していなかった。ドトールのレベルさえありゃ十分な気分だった。
カップを口に近づける。こ、これは!
くさい!
くさいコーヒーだ!
眉をしかめながら飲む。な、何だこのコーヒー!!
まじい!!くそまじい!!うげええ!!
なんていうか、すっぱい!あと、ぬるい!くさいすっぱいぬるいコーヒーだ!
かつてないまずさのコーヒーを目の当たりに俺は一瞬自我が崩壊しそうになる。
俺一口でギブアップしようと考えた。が、カウンターの向こうでは関取っぽい店員がニコニコしてる。ここで、一口飲んで帰るのはあまりに気が引ける。
そうだ、砂糖だ。砂糖を入れるんだ。
そう考えて砂糖をぶっこむ。
そして飲む。
すっぱい!すっぱい!雑巾臭!
カウンターではニコニコ顔の関取。
「殺意」の二文字が頭をよぎる。
目を瞑って、呼吸を止めて一気に飲み干す。
半泣きで飲み終えた。そんなコーヒー400円也。
もう俺の顔は半ば青ざめている。
漫画喫茶でもいって落ち着こう。そう考えた。
関取に場所を尋ねると「わかんない」という。
途端に慌しく外へ出る関取。
隣の店に入っておばさんに尋ねてる。
あんたさ!あんたさ!優しいのは分かったからさ!
その思いやりに費やすカロリー半分にして、残ったカロリーでうまいコーヒーいれろよ!
結局おいなりやさんのおばさんがわざわざ地図を書いてくれた。
ありがとう。
漫画喫茶へ行く。
漫画喫茶には普通インターネットがある、といった固定観念に足をとられた。
ないよ。そりゃそうだよね。漫画喫茶だもん。
ここの店員は言葉遣いが間違っているお姉ちゃんだ。
鈴木光司「クーデタークラブ」読了
漫画喫茶で、腹を下している自分に気づく。
あの関取めえ~!!