訳あって抗鬱剤を齧っている。
一行目から読む人を引かせる日記「感電少女」なかなか素敵。
訳あって抗鬱剤という名のケミカルドラッグを齧っている。
俺はこれを服用すると程なくして眠くなるらしい。
中島らものような切実なものもなければ自己陶酔のためのツールというわけでもない。何となく手元に転がり込んできたから齧っているだけの話。
三郷の大通りを歩いた。
三郷を「故郷」などとは思わない。敢えて定義するなら「俺の故郷になれなかった町」といったところだろうか。俺は三郷に「故郷」を見つけられなかった。だから、未だに此処に赴くと厭な気持ちになる。曇りの空と溜息がよく似合う。
三郷の大通りを歩いて俺はこのまま居心地の悪い空気に溶けるみたいに死ぬのがいいのかなと思ってみた。悲しくなった。
南雲宅に泊まった。
色々考えたが文章に出来そうにないのでしばらくそれは寝かそうと思った。
明けた次の日、松伏から北越谷まで歩いた。
4時の夕暮れだった。むこうの雲が紫青色で美しかった。南雲君がUFO(らしきもの)を見つけた。(ちょうどその前日にUFOの散文を書き上げていたのでそれはちょっとした偶然だ。)UFOは見つけた瞬間逃げるように隠れた。川があった。その土手を歩きたいと思った。歩くに気持ち良さそうな土手だった。東京にもこういう場所は必要だと思った。
弟と初対面。なかなか複雑な事情を彼は理解できていない様子だった。
手品を見せられた。俺もかつてそこで手品を披露したことがあった。
苦笑なのか純粋に微笑んだのか憶えていないけれど俺は確かにそういう表情をしていた。
抗鬱剤を齧った。(多分抗鬱剤の効果は本当に僅かな筈だ。)
駅には誰もいなかった。風が冷たく荷物が重く凍えてそれでいてとても冷静だった。
色々なものが大切だと思った。色々なものが大切に思えた。
日暮里の山手線のホームに佇んで「今年も生きていこう」と決めた。