長い文章を書こうと思う。それはとりたてたいした一日ではなかったからだ。
久々の電車での外出。それは刺激的な冒険。
下北沢の古本屋で「カリクラ」を探す。下北沢の駅前にいつも居る路上パフォーマーが、一人もいない。
寒さの所為か。まさか、寒さの所為なのか。そうだとしたら馬鹿だ。
大ちゃんを見習え!殺すぞ!
以前好きだったこの町だが、最近は微妙だ。
後輩から署名を頼まれて知ったのだが、下北沢にでっかい道路を通す計画があるらしい。頼まれた署名はそれを阻止するためのものだった。ちょっと待て。それはいいことなんじゃないか。賑わえばもっと栄えるだろう。
つまり、下北沢の街としての「隠れ家」的なポジションを維持しようという話らしい。ここに下北沢に集う人間の性格が断片的に伺える。街としての向上欲を許さないのだ。サブカル嗜好の現われなのか。そんなことやってると下北沢自体が渋谷、新宿並のオーバーグラウンドな街になることは無いのは勿論、そんな運動してる奴もオーバーグラウンドには行けんぞ。仮にも表現者の集う町としての肩書きを持つなら、そんなしゃらくさいことどうでもいいじゃん。景観を害す、とはいっても、道路ごときで雰囲気の変わる街なら、はじめから雰囲気なんてなかったに等しいんだ。
まあ、補足として書くと、後輩は可愛いし義理を立ててその署名は同意したんだけどね。
ちなみに、目的の本は、なかった。
途方に暮れた。
電車に乗る。
新宿駅へ向かっていたのだが、駅に着く直前に席を立ち扉の上に掲示されていた広告を読もうと、一つの扉の前に立った。暫くして電車は駅に着いた。シートに座っていた乗客が俺の後ろに並ぶ。周知の通り、電車には停車してから扉が開くまで数秒のmomentが存在する。その間に乗客は俺の後ろに続いた。先述したとおり俺は広告を読もうとそこに立っていた筈だった。
俺の目の前の扉は開かなかった。背にした扉が開いた。
これはかなり由々しき事態だ。俺の後ろに続いていた乗客の皆さんは、すぐに方向を逆転して反対側の扉で降車する。その時の表情は見れなかった。みんなどんな顔をしていたのだろう。きっとそれは苦笑いのような、曖昧な表情だったに違いない。ああ。悪いことをした。「騙された」と、告訴されたらどうしよう。大変だ。角度を変えてみるとこれは「過失」にあたるのではないか。なんかそうなんじゃないか。
「過失」大変だ。最もニュースでよく聞く「過失」は「業務上過失致死」だが、「過失」で人は死にうる。うっかりじゃすまされない。俺の体験した事態は小さなことだけど、千里の道も一歩からだ。うそつきはどろぼうのはじまり、とはよく言ったもので、昔の人が言っていた。
うっかりさんは業務上過失致死のはじまり。
言ってねーよ。
新宿で降りてブックオフに向かう。
ブックオフ新宿店は厚生年金会館の隣にある。新宿駅から厚生年金会館まで歩いて、目的の本はなかった。「劣等25%(永野数馬)」「行きそで行かないところへ行こう。(大槻ケンヂ)」「檸檬(梶井基次郎)」を購入して、新宿駅へ向かう。
気づくべきだった。
厚生年金会館は新大久保だ。
古本を買うには途方もない距離を歩いた。
うっかりさんは業務上過失致死のはじまり。
言ってねーよ。
帰宅して「檸檬」を読む。この本を買うのは3回目だ。買うたびに無くす。
兼ねてから少女感電企画「梶井基次郎remix同人誌”LEMONEED”」という企画を構想していたが、これ無理だ。久しく読んでなかったので忘れていたが信じがたい文才だ。23歳でこの作品書いたのか。狂ってるな。敗北。3回目の敗北。
気を取り直して筋肉少女帯、大槻ケンヂを聴く。元気が出る。
彼の音楽は芝居の台詞にしたい。
例えば「GURU」という唄はこうだ。
双子の姉の女の子と植物園に行った。やるせない娘で、優しく美しかったが誰もそれに気付いてはいない。気付くものか。分かるものか。分かってたまるか!だが、お前だけは分かってあげなさい。お前が悲しみに在るとき、彼女は喜びに在る。春の夜の人のいない伽藍の底に、シンメトリーに双子の少女がいて、遊びとはいえない殺し合いのようなキャッチボールをしている。ぶつけ合っては血の色の泣き笑いの双子の野球だ。その姉の、ギリギリの想いを、怒りを、やるせなさを、お前が何故人に伝えないというのか、この馬鹿野郎!!!俗世間に呑まれたか!伝えろ!伝えろ!伝えろ!伝えろ!!伝えろ!!!お前が人に、本当に伝えたいことだけを、お前は今から、彼女の綺麗な魂のみを、伝えたらいいんじゃないか。大丈夫だ。君ならできるよ。
伝道師よ!!世界は、遊びとは言えない殺し合いのようなキャッチボールなんだ!!
多分この言葉はオーケンが自分自身に宛てたことばなのかな。
俺この歌に何回魂を揺さぶられたか分からん。伝えなきゃって思った。
だれか舞台上で叫んでみろ。
例えば「踊るダメ人間」の一節はこうだ。
ああ、ダメ人間として生きる愚かさをあまねくすべての人に伝えたい。そして、ダメ人間の王国をつくろう!王様は、僕だ!家来は、君だ!!
こんな台詞はけるのは奴しかいねえって。
俺、今日も生きてる。
愉快だ。
最近、宮沢章夫を読み返しているから文章が一部それっぽい。
勿論意識的にそう書いた。