The end of company ジエン社 実験公演『いつか私たちきっとそこきっとそこで、そこに』


2017年8月29日(火)~9月3日(日)
会場・アーツ千代田3331 B104

開演日時と時刻

8月29日(火) 19:30
8月30日(水) 19:30◎
8月31日(木) 16:30★/19:30
9月1日(金) 19:30
9月2日(土) 13:30/16:30
9月3日(日) 13:30/16:30

(★木曜昼割引回)

・開場は開演時刻の30分前、受付開始は1時間前になります。
・全席自由席
・上演時間 65分
 
◎8月30日(水)の公演後、ゲストと主宰の山本健介が劇後解説を行います。
30日のゲストは、本作の音楽を担当していただいた、ミュージシャンの「しずくだうみ」さん。本作のため書き起こされた楽曲の制作の経緯や、劇の感想など伺う予定です。
約20分の予定。

出演
片瀬宇海 北村美岬 木村梨恵子
高橋ルネ 坊薗初菜 洪潤梨
由かほる

スタッフ

舞台監督 吉成生子
音響 田中亮大
照明 みなみあかり(ACoRD)
衣装 正金彩
総務 吉田麻美
写真 刑部準也
演出助手 黒澤多生 篠原加奈子
制作 水野綾
協力 ECHOES
主催 The end of company ジエン社
助成 公益財団法人 セゾン文化財団

チケットのご予約
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チケット料金

予約 2800円
当日券 3300円
木曜昼割引 2000円(要予約)
22歳以下割引 2200円(要身分証)
18歳以下割引 500円(要身分証)

あらすじ

 かぐや姫が月に帰ってしまってからというもの、ここ、ここは、ここの村は急速に人がいなくなってしまった。姫を住まわせていたおじいさんとおばあさんは、どうしていいかわからなかった。おじいさんもおばあさんも30だった。上古の時代の平均死亡年齢からすると、自分らはもういい歳だった。いまさら稲作なんて正規雇用にありつこうということもきっとできない。ここ、ここの、ここは、そういう村だ。 太郎はおばあさんのプロデュースによって「桃から生まれた」という設定をつけられデビューした。「日本一」というキャッチフレーズをつけられ、肩のとんがったサイヤ人戦士みたいな服を着せられ、「桃太郎」として富を独占するあの、あそこの、あそこにある鬼たちの所へ行って財宝をとってくる、という、なんかそういうコンセプトだ。
「桃から生まれたっていうのは、それはどういう……」と、太郎は無理やりつけられた設定になやんでいた。ためしに語尾に「もも」ってつけるのはどうだろうか、と試してみたが、鬼たちは苦笑いをする。「いやね、せっかく君は桃でセンターなんだから、もっとこう、桃を使った退治の仕方があるんじゃないか?」と鬼たちはアドバイスしてくる。内心太郎は「いや、退治される側の人間が、退治されアドバイスするの、どうなんだ?」と思っていたが、犬と猿と雉は素直に「ハイ」と言って、笑っている。鬼たちは桃太郎に退治される列に並ぶ。桃太郎は一鬼一鬼に挨拶をしながら、おもちゃのような刀で切っていく。鬼たちは幸せそうに笑う。太郎は斬っているのにだ。何を言っても、何をされても喜ぶ鬼たち。死んでいく鬼たち。1回退治されるために、この鬼たちは1000円分の買い物をしなくてはならない。鬼たちの中には、太郎に退治されるために会社を転職した者もいた。太郎は斬っていく。切り刻んでいく。鬼たちは笑顔で次から次へと死んでいく。
 そのころおじいさんは、去っていった鶴の所へ行っては、また覗きに来ていた。鶴は、おじいさんの所へ押しかけに来た時と同様、美しかったし、白かった。おじいさんは、それ以上は近づかない様に気を付けていた。気をつけないといけない。あれは、鶴だ。人間ではない。だから、僕は覗くだけだ。今考えれば、わざわざこっち、こっちに、こっちへ来て、ハタを織ってくれたのは、鶴として、あるいはおじいさんとして、お互いに一線を越えてしまっていたと思う。
 そして鶴もまた、おじいさんが来て、覗いているのを知っている。
「かぐや姫が月に帰ったから、私のところにきたんですか?」と、質問したかった。
「違う」とおじいさんは言いたかった。
 鶴とおじいさんは、そこ、そこは、そこでは、無言だった。
 帰宅すると、おばあさんは鶴がハタを織り残してくれた反物をすべて破り捨てていた。おばあさんは、おじいさんが「山へ柴狩りに行く」と言って、鶴に会いに行ったのを知っている。おじいさんは羽の散らばる家の床を見て、まるで雪みたいだと思った。「それは私、私、私でした。……それは雪でした」と、何十年も前に別れた女の事を思い出した。あいつは今、どこで、何をしているのか。卒業し、運営の公式情報が途絶えた以上、おじいさんはもう雪女が、いまどこ、どこで、どこへ、いるのか、何をしているのか、知ることはできない。破れた鶴の反物の羽を拾うと、そこには笑顔で泣いて笑う鶴とおじいさんのツーショットが浮かんでいた。ハートマークを沢山手書きでしてもらった羽は、鶴に会いに行き、罠を外すたびに貰ったものだ。罠にかかっていたのは、自分だったのではないか、とおじいさんは今、ふと思う。
 おばあさんもそんな羽を見て思い出していたのは、羽衣の事だった。おばあさんはこう見えて天女だった。鶴の作った反物はまるで自分が10代の時着ていた羽衣みたいに薄く、白かった。私はかつて天女だった。今は天女ではなかった。天界に住み、矢口真里のやってるAbemaTVにグループで出て笑われたり、地方FMで月に一度ラジオでパーソナリティをやったり、o-westの楽屋で何十人もの天女たちと共に楽屋の鏡前で今日のステージで歌う歌を口ずさみながら、すり寄ってくる他のグループの天女の写メに気軽に応じてはあしらっていた。
 それが、たった一度のミスで、天女は天女でなくなった。下界で水浴びをしている時に置き羽衣を無くしてしまったからだ。ていうか、天女はあの、ああいう、ああいった感じの下界で水浴びをするような女だった。それでいろいろあって羽衣を当時若かったおじいさんに取られ、いろいろあって結婚し天女ではなくなり、そしていろいろあって今反物を引き裂いている。
 私は、今でも、羽衣を着れば天女に戻れるのだろうか。この男は私が天女だったから結婚したのだろうか。天女には鶴の残した反物を纏う勇気はなかった。
 みたいな話を、マチは聞いていた。マチは、話をしてくれるのを待っていた。マチはただ待っていた。話をしてくれるのを、愛してくれるのを、時が過ぎるのを、ただ待っていた。マチは何かをしたかった。ただ何をすればいいかわからなかった。もし、歌い出したら、歌手になってしまう。演じだしたら、踊りだしたら、俳優に、ダンサーに、何者かに、なってしまう。
 それは違うと思った。
 そうではない何かになれると、根拠もなく信じながら、マチは自分に夢見てくれる誰かを、そこ、そこに、そこで、待っていたのだ。

 
会場・アーツ千代田3331 B104
 


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